陰玉仙人
我輩は仙人であるから男である。(女の場合は仙女という)
男であるが、もうちょっとで「女」にされるとこだった。
16才頃の話である。思えば美少年だった。(今でも名残は止めておるぞ)
16才の夏の日。
母はいった「亡くなったお前のお父さんも、お前といっしょで、しょっちゅう知らない人を連れて来て家に泊めるんだよ」
私「だって、この辺は旅館も何もないんだから一晩位泊めてあげようよ」
母「もう2階に上げちゃったんでしょう。なんでも私の断りなしに、さっさと決めるんだから、ほんとお父さんとそっくりだわ」
その男は、50才位であるが、ガッチリとした体格で日焼けしている。
昨夜の終電車で知り合った。
田舎の終点の駅から、2キロの山すそに私の家はある。
聞けば、○○山に、杉を伐り出しに、明日山へ登るということであった。
そういえば、その山中に、10人位の山林従業者が小屋を作り、伐り出した杉の木を鋼製のロープを張った簡易ケーブルで、下に降ろしていたのを見たことがある。
男は、そういった仕事をしているのだろうと合点した。
「こんな終電で駅に下りても、宿もなんにもないよ」
男「これから眠ないで山に登るつもりだから、心配しなくてもいいよ」
私「僕の家は、その山のふもとだから、家に泊って、明日、山へ入れば。何も、こんな夜中に、何時間もかけて登ることないでしょう」
そんな訳で、私は男を家に連れてきて、2階に上げたのであった。
さらに「僕もおっちゃんと一緒に2階で寝るから」思えば、人を疑うことを知らない無邪気な頃だった。(16歳にしては幼すぎるんじゃない、と言われそう)
夜が更けて行く。私は寝入っている。
???
男が私の晒し(盲腸の手術をした後で、晒しを巻いていた)を剥して行く。
何だか変な気分だ。(ぶっちゃけて白状すると、何かイヤらしい期待感のようなものがあった)
腹に巻いていた晒しが、全部解かれ、(それにしても何で晒しをとる必要があったのかしら)ソロソロと、パンツを下ろしにかかった。
男の体が熱い。
ハアハアと興奮している。
その瞬間、男が、私の背後から抱きついて来た!
「キャッーー」
私は、男をふりほどき、けっとばして、一目散に逃げ階段を駆け下りた。
母も姉も弟も、驚いて、何があったのか、どうしたのかと聞く。
私は何も言わず、自分の蒲団で寝た。
朝。
うっとうしい気分で目が覚めた。
あのおっさんはまだいるんかしら。
どんな顔してあいさつに来るんだろう、と思っていると母が、「あの人は、朝5時頃、出て行ったよ。何も言わないでね。2階に上がったら、蒲団の上に千円札が置いてあったよ」
あの夏の夜、あのまま男に抱かれていたら、多分、私の人生も相当変わっていたと思われる。
性的には多分「女」になっていただろうと思う。
我輩、陰玉仙人は、女は大好きで、男色には一切興味がない。(その後も、そんな体験はしたことがない)
しかし、あの夜、男が背後から抱きついて来た、あの感触は、一生忘れられないこともまた、確かである。
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