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陰玉仙人 関東のある大温泉地に、その「寮」はあったんじゃ。 |
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10時過ぎ、土産物屋の従業員が、バラバラと帰って来よった。 男もいるが、若いべっぴんの女の子もおる。 その日は、20人ぐらいが寮に帰って来た。 皆、疲れ切って、だらしない感じじゃ。 二交代制にしておるそうじゃが、人の手当てがつかない場合は、8時から10時までぶっとうしで働いておるそうじゃ。そりゃ疲れもするわな。 わしは、皆に、今晩、ここに泊めてもらうことになったからよろしくと如才なく挨拶して、名刺をひとりひとりに配りよった。(名刺を配る目的は、後日、女の子から電話があるかも知れんと期待しておるからじゃ。現に、1年後、電話かかって来た女の子もおったぞ) そのうち、皆、冷蔵庫から、ビールを出して、わいわい始まった。 多分、毎日が、こんな無礼講のような雰囲気なのじゃろうな。 ひとしきり盛り上がった後、皆でビデオを見ようと言う話になって、金髪のお兄さんが、カセットを入れたんじゃ。 何んとそのビデオは、ボカシなしのアダルトビデオじゃたのじゃぞ! それを20人ばかりの男も女も見ておるんじゃ。 ビデオがはじまって、しばらくは何んじゃかんじゃしゃべっておったが、そのうち、皆んなが変な気分になって来て、しゃべらんようになった。 ビールで赤い顔した女の子たちも、トロンとして熱にうかされたような目でビデオに釘付けになっておる。 わしは、変な期待で、ドキドキし始めた。 こりゃ、そのうち乱交パーティーになるかも知れんぞ。 皆、畳にベタッと座ったり、寝て見ておるものもおる。スナック菓子をバリバリ食っておるものもいる。もうすでに下着姿になっておる男も女もいる。 こんなチャンスは滅多にないぞ。 わしも生れて初めて、乱交パーティーを経験できるかも知れん。 わしは、あらぬ想像をして、目は宙をさまよっておったじゃろう。 そこへ店主(店主は、30歳代の男じゃ)が、わしの所へ近づいて来てこう言いよった。 「先生、ここは若い連中ばかりで、先生も落ち着かないと思いますので、ホテルの本館に、部屋をとりましたので、そっちへ移りましょう。」 わしゃ、そりゃ困るここで泊めてくれと本心そう言いたかったが、格好をつけるのが、わしの悪い癖(何せセンセイと言われておるからのう)で、嫌々同意してしまったんじゃ。(千載一遇のセックスパーティのチャンスを、これで逃すことになるとは残念、無念!) |
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結局、ホテルのツイーンルームで一人わびしく寝ることになる。 じゃから、その後、この森の中の退廃した不思議な「寮」で、わしの想像(妄想というべきかな)どうりのことがあったかどうかは、確かめようがない。 しかしじゃ、あの淫靡な光景のもとでは、それがあって当然じゃと思う。 もうあんな、猥雑な体験は、一生することはないじゃろう。 かえすがえすも、あの日寮に泊まらんかったことを後悔しておる。 何んでも粘らんといい思いはできんのじゃ。 ああ、時間が戻るなら、あの日のあのすえたような、淫らな「寮」に戻りたい。 昨年、この「寮」のあった温泉ホテルの谷底に下りてみたが、もうその「寮」は、とりこわされておって、何んの痕跡も残ってはおらんかった。 ※ご感想、お問い合せ等ございましたら掲示板 もしくは執筆者のメールへどうぞ! |
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